ヒカルの碁 第六十七局 「試される伊角」

あらすじ

伊角の決断

楽平(レェピン)に負けてショックを受ける伊角ですが、ここで自信を失ったままでは日本に帰ったらもう自分のプロ試験はなく、和谷や越智そしてヒカルと対等に向き合えないのだと伊角は真剣に悩みます。そんな伊角に電話が来ます。電話は父親からで、いつまで中国にいるのだと聞きます。すると伊角はプロ試験が始まるまで中国で勉強したいと申し出ます。

自信をつけてプロ試験に挑むべく2ヶ月間中国に残る決心をした伊角は、ホテルを引き払い、中国棋院の寮で自分を泊めてくれると申し出てくれた楊海(ヤンハイ)の所に行きます。

ヤンハイのテスト

ヤンハイの部屋には碁盤もありますが、彼自身はパソコンに興味があるようです。伊角がレェピンと打って負けたということをヤンハイに報告すると、ヤンハイは、「あのレェピンに勝てそうもないようじゃこの部屋には置いておけない」と言い、対局しようと言い始めます。

結局、ヤンハイは伊角がレェピンと互角レベルの力を持っていることや、伊角のセンスも認め、出て行けとは言わず伊角が部屋に泊まることを許可します。どうやら、夜に打った対局は一流棋士の指導碁だったのだと伊角は認識します。

伊角は、自分でも知っている中国のトップ棋士が対局や検討に加わる様子に興奮しますが、ヤンハイによれば中国のプロは30までがせいぜいピークで、その後は若い人たちに引きずり下ろされるのだと語ります。

挑戦状

翌日、伊角が訓練場に行くと趙石(チャオシイ)に会います。伊角が中国に残ることとなった原因の子供です。話しているとそこにレェピンがやって来てチャオと遊びに行こうとします。レェピンが伊角をバカにしているとヤンハイがやって来ます。ヤンハイは一週間後にもう一度伊角とレェピンが対局をして、もし伊角が勝ったらもう少し真面目になれ、と言い伊角の挑戦の場を作り出します。

ヤンハイの思い

その夜、ヤンハイは自分がレェピンと同じ雲南省出身で、帰省するとレェピンの両親が、大事な一人っ子である彼を心配していることを気にしているようで、どうやら今の成績では地方に帰されてしまうかもしれないことを、ヤンハイは密かに悩んでいたようです。そこで、伊角を半ば利用する形でレェピンを更生させようというのがヤンハイの計画で、協力してくれと伊角に頼みます。

心のコントロール

ヤンハイは、伊角にレェピンに負けてしまった時の状況や昨年のプロ試験の時のことを伊角に聞くと、自分の碁が打てなかったり人の言動に心が乱れたことや自分を見失い立ち直れなかったことなどを語ります。ヤンハイは、「心のコントロール」が伊角の課題だと見抜きます。 

周りの目も耳も気にせず、つきまとう様々な感情に振り回されないことが伊角に一番重要なことで、これは自覚と訓練でどうとでもなること。元々の性格なんて関係なく心のコントロールは習得できる技術なのだ、と伊角に言い、伊角は衝撃を受けます。

そして、時は流れ伊角はヤンハイの指導もありリーグ戦でも勝てるようになります。精神面で落ち着いて来たとも周りから指摘されるようになり、レェピンとの対局の日になります。

再戦!

対局はどうやらヤンハイが色々と計略を準備しており、レェピンは対局時間を十分前だと思ってカリカリしている状態になっています。真面目すぎる伊角は、レェピンに詫びを入れ持ち時間にハンデをつけて対局を始めます。自分が伊角を動揺させてはダメだろうとヤンハイは頭を抱えますが、対局はすんなり始まります。

対局を見つめるヤンハイは伊角が落ち着いて対局している様子を見て安心します。そして、対局は伊角の二目半勝ちで終わります。ヤンハイは伊角が一つ壁を越えたものとして、安堵します。その夜、伊角に負けて悔しいレェピンは伊角を訓練場に連れて行き対局をさせるまでになり、ヤンハイはレェピンについても胸をなでおろします。

伊角に感化されて真面目に囲碁に取り組むようになったレェピンを見て、棋院の先生たちも嬉しそうに伊角に感謝の念を抱きます。そして伊角は、父親にプロ試験の申し込みをお願いし、プロ試験そしてプロの世界に堂々と参戦して行くことを決意します。

みどころ

「伊角の碁」が進化する様子がよくわかる話となっています。主人公であるヒカルもちらっと出て来ますが、完全に伊角にスポットライトが当たります。

ヤンハイの粋な計らいが冴え渡りながらも、伊角の真面目さが裏目に出たり非常に面白い回です。ヤンハイがレェピンを心配する様子は、広い中国で大事にされる「同郷」という考え方に基づいているのかもしれません。同じ地方出身の人たちは互いに助け合うという文化が、日本よりも強く根付いています。

ポイントとなる心のコントロール。現在では心理トレーニングやメンタルトレーニングという考え方が一般的になっていますが、この辺りも作者の先見の明というか先進的な考え方が垣間見えます。

中国のプロの世界についてもさらっと触れられ、30がピークだという厳しい現実にも驚きです。そんな世界で修行をしている伊角が、今後どうなって行くのか非常に楽しみになります。最後の電話のシーンは、明らかに面構えが変わっており、作画にも気合が入っているのかなと感じさせますね。

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