あらすじ
観戦者たちの驚き
塔矢名人とのタイトル戦が控えてる緒方九段は病院で名人の様子を見に行こうと思いますが、面会謝絶の札を見て驚きます。看護師さんからネット碁を打つために面会謝絶し、食尽も手付かずだと聞き、緒方は誰と打っているのか気になり急ぎ帰宅してネット碁を開きます。そして対戦者のsaiの文字に衝撃を受けます。
アキラたちは対局を分析し、友人たちは黒番である塔矢名人の方が有利であると言いますが、アキラはまだ形成はわからない。saiなら相手の手の内や読みも網羅した上で必ず碁を自分のものにする一手を打ってくる。このまま黒優位のまま対局は終わらないだろうと言います。
saiとは誰なのか?
そして、アキラは一人心の中でこの対局が偶然の産物ではなく、あらかじめ打ち合わせされた上でのものだと看破します。saiの可能性として考えられるは十段戦で一時退院した時に会った人か、お見舞いに来た人たちのうちの誰かだろうと考えます。そして、ヒカルがお見舞いに来たと聞いたときのことを思い出します。誰か心当たりはないのか?と聞かれ、ネットカフェでヒカルと会った時のことを思い出しますが、「心当たりはない」とアキラは答えます。
対局を見ている緒方もsaiとの対局には十段戦の時の時に会った誰かか、お見舞いに来た誰かだと思いヒカルを思い浮かべますが、それなら院生時代からもっと有名になっているはずだと否定します。しかし、saiの知り合いという線があるなと考え、ヒカルでなくても身近にsaiとつながりのある人物がいるのだろうと分析します。
佐為の一手
形成は黒がわずかに有利で、大寄せも終わりが近いがこの相手にはわずかな気の緩みも許されない、相手から伝わってくる気迫には覚えがある、と感じ新初段シリーズのヒカルとの対局を思い出します。そんな矢先の佐為の一手が対局の流れを変えます。名人の黒優位に見えた形成は互角かわずかにsaiの白有利に傾きます。
残るは小寄せのみとなり、終局までのお互いの手を読むと自分の半目負けだと塔矢名人は悟ります。寄せはそれまでの戦いと違い一本道で、saiが間違えるはずがないと名人は読み、投了に踏み切ります。観戦者たちは投了には早すぎると驚き緒方を含めて名人には巻き返す余地はないのかと思います。一方、アキラは自分の中でsaiに重なるのは昔のヒカルであるという結論を導きます。
千年の答え
一方、当の佐為は対局に満足し、感動するとともに自分を誇りに思います。そして名人とヒカルへの感謝の念を感じます。そんな時、ヒカルは名人の黒が逆転する一手を見出し、「この一手で佐為の負けだ!」と嬉しそうに言います。その瞬間、「今、わかった。神はこの一局をヒカルに見せるために、私の千年の時を長らえさせたのだ」と佐為は悟ります。
みどころ
遂に名人と佐為の対局に決着が着きます。囲碁の道を極めた二人による対局の結末もまた、囲碁を極めたものにしか理解できないものでした。
対局が進む中で、アキラと緒方は次第にsaiの存在の全貌を掴み始めます。十段戦の時の関係者か、お見舞いに来た人物にsaiと関わりのある人物がいるということ、そしてヒカルが何らかの鍵を握っているのではないかということを想起します。アキラに至っては、出会った時のヒカルとsaiを重ね合わせるようになります。
互角に見える形成の中、名人は半目負けを悟り投了します。観戦している人たちは非常に驚きますが、名人の決断は早く固いものでした。しかし、黒が逆転する一手を物語の最後にヒカルが見出します。この場面こそが物語のクライマックスであり、佐為とヒカルのこれからを運命付ける一手となります。