ヒカルの碁 第五十七局 「saiと打たせろ」

あらすじ

対局の後

saiとtoya koyoの対局はsaiの勝利となり、観戦者はsaiに対する想いをより一層強くします。対局の日の夜、ヒカルは佐為に「佐為の考えてることも、名人の考えてることも分かって、対局の真ん中にいる気がした」と興奮が覚めない様子で語りますが、同時に名人の負けたら引退宣言を思い出し焦ります。

翌日、名人に会いにヒカルは再び病院に行きます。いきなり五冠を持っている名人が引退しては大変だとヒカルは頭を悩ませますが、佐為はどこか上の空の様子です。

もう一度saiと打たせてくれ

病室に行くと、そこには名人の奥さんすなわちアキラの母親もいましたが、名人はヒカルと二人きりで会話をしたいと言います。二人だけになり、ヒカルは本当に引退するのか?と名人に聞きますが、「saiは君か?」と名人は逆に質問をし、対局中に幽玄の間で向かい合ったヒカルを思い出したと語ります。気まずい沈黙が流れますが、名人は詮索しないと言います。そして、ネット碁で良いからsaiともう一度打たせてくれ、と名人は頼みます。

ヒカルは、ネット碁で良いなら佐為に対局させることができるし、佐為も喜ぶだろうと考えます。しかし、佐為は自分に残された時間がそう長くないことを悟り始めます。

引退とは

名人を引退させたくないヒカルは、もう一度打てたら引退を取り消してくれるか?と名人に問いますが、名人は一度言ったことは守る、次の十段戦を最後に引退するつもりだと言います。ショックを受けるヒカルですが、名人は引退することは自分にとってさして意味のあることではないし、メリットもあるのだと語ります。

棋士としての仕事やしがらみといったものから離れることができる上につまらない取材を受けたりすることもない、碁が打てなくなるわけじゃない。私にはこの身があるし、タイトル戦でなくても本気の碁は打てる。昨日のsaiとの対局がまさに、それで、どこの誰ともわからない人と、あれほどの碁が打てるのだと名人は感慨深かそうに語り、saiともう一度打ちたいと言います。

緒方の推理

saiの正体は解らないが、その関係者がヒカルや他の見舞客にいるのだと予想する緒方がちょうど病院に来ます。名人がネット碁をやると聞き、対局を橋渡しした存在は誰なのか少なくとも名人は知っているだろうと考え、緒方は病室に行きます。

名人が引退したら自分の責任にもなってしまう。saiともう一度対局をセッティングするから引退宣言を取り消してくれとヒカルが頼み込んでいるその矢先、緒方が病室に入って来ます。

俺にも打たせろ

saiについて問い詰める緒方ですが、ヒカルは隙を見て病室から逃げ出します。しかし、何としてもsaiについて知りたい緒方に追いつかれてしまいます。緒方は「お前がsaiを知っているなら、俺にも打たせろ!」とヒカルに怒鳴ります。

ヒカルはsaiなんて知らない。たまたま名人とsaiの対局を見ていただけだとその場を取り繕います、がそんなところにエレベーターでアキラがやって来ます。そして、一瞬の隙を見てヒカルはエレベーターでその場から逃げ出します。

アキラが緒方にヒカルについて尋ねると、お見舞いに行ったらヒカルがいて、名人との会話が聞こえたこと、その内容から察するにヒカルとsaiは十中八九知り合いだと語ります。しかし、アキラはヒカルとsaiは同一人物だと予想しています。

追求

緒方とアキラは病室に入るやsaiとヒカルについて質問しますが、名人はヒカルは関係ないとシラを切ります。昨日の朝、saiが対局を申し込んで来た、良い碁だったろう?と言います。緒方はアキラにも名人に問い詰めるように促しますが、「お父さんが知らないと言うのなら、これ以上聞いても無駄だろう」と言います。

saiとヒカルが別人だと分析する緒方に対して、自分は答えが出せないとアキラは悩みます。しかし、ヒカルが全ての謎の鍵を握っているのだろうと考えます。名人にもヒカルにもシラを切られてはどうにもならないと、緒方はひとまず追求を諦めます。

佐為の悲しみと時間

病院から逃げて来たヒカルは一息ついて、佐為に緒方九段のことやこれからのsaiと名人について尋ねます。時々なら打たせてあげられるかも、とヒカルは言いますが、佐為はどこか上の空で内容も頭に入っていない様子です。真意が計りかねるヒカルは、時間はあるのだから慌てるなと佐為に語ります。しかし、自分に残された時間の少なさを悟った佐為は人知れず悲しみにくれるだけでした。

さて、日本棋院にて森下師匠の勉強会で和谷が名人とsaiの対局を並べていると、そこに遅れて来たヒカルが参加します。名人が投了した局面を見た一同は驚きながら盤面を分析します。そんな時、ヒカルは自分が編み出した黒の逆転の一手を披露し、賞賛を浴びます。

「ヒカルの持つ力に、私だけでなく、周りも気付き始めた。見える、ヒカルの頭上に輝いている、私にはない、未来が」と佐為は一人寂しく思いを募らせます。

みどころ

ついに、saiと名人の対局が終わり、名人が負けてしまったことによって引退騒動に繋がることを恐れたヒカルが焦る様子がよく描かれています。

対局前に不信感を抱いていた相手に対する名人のコメントや引退に関する考え、この身があれば本気の碁を打つことができると言う発言が、佐為の存在との対比や、様々な事柄と繋がっていて非常に興味深いです。

名人だけでなく、緒方のsaiとの対局を希望する声も凄まじく、怒鳴りながら「俺にも打たせろ」と言う様子は、なかなか凄みが聞いています。saiについて聞かれてもシラをきる名人や、そんな父親に対して追求を諦めるアキラの様子もなかなか考えさせられます。

一方、佐為の心には何らかの変化が起きたようで、それは残された時間がだんだんと減っていくことを感じ取り、焦りや絶望感が募る様子が細やかに描写され、ヒカルとのコミュケーションもうまくいかなくなり始めます。

伏線の多いシナリオですが、それだけに繰り返しみたり細かい分析を加えていくことが楽しいアニメだなと考えさせられますね。

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