ヒカルの碁 第四十七局 「プロの世界へ」

あらすじ

合格の二人と伊角

プロ試験に合格した和谷とヒカルは、行きつけのハンバーガーショップで伊角について語ります。どうやら3月を待たずして院生や道場をやめたことを和谷は語ります。しかし、棋院の先生は、伊角がこのままでは終わらないことや、一人になり自分を冷静に見つめるのも良いことだ言います。 

和谷はプロになると記譜係の仕事もあるためヒカルにそれを教えようとしますが、ヒカルはプロの世界がアキラや塔矢名人といった人たちと繋がっているということに興奮します。対局するのはまだまだ先であると現実を語る和谷の言葉など意に介さずヒカルは楽観的な妄想を語ります。

佐為の不安とプロの世界

一方ですごい人たちと「いつかは対局できるんだ!俺!」といいう発言に佐為は衝撃を受けます。そして、高段者や名人と繋がっているのは自分ではなく、ヒカルだけであると改めて認識します。

一方その名人クラスの戦いでは、王座戦で座間王座と塔矢名人の対局があるようで、二人はエレベーターで緊張感漂う会話を繰り広げます、名人は防衛6連覇をしアキラは20連勝中とのことで、親子共々素晴らしい戦績であるとわかります。一方、桑原本因坊は一度すれ違った際に興味を抱いたヒカルがプロ試験に受かったことを知り、楽しみだと語ります。

佐為はヒカルがプロになったことにより、自らの存在の意義や碁打ちとして活動できなくなることを危惧している佐為は、どこか悲しげにふさぎ込むようになります。そして、佐為は二人の間には見えない溝ができ始めるのを感じます。 

塔矢名人のタイトルと佐為の執着

夏に通っていた碁会所に報告に行ったヒカルは報告が遅いと河合にどやされます。そんな中、塔矢名人が王座戦で二勝しておりもうじき五冠になると聞きます。相変わらずタイトルなどの囲碁の世界に疎いヒカルは、ご厚意で過去の新聞をもらいタイトル戦について勉強することにします。

家に帰り新聞を見ると、ヒカルは塔矢名人がいかに強いか知ります。そして、対局の記譜を佐為は見つけヒカルにそれを見せるよう頼み、焦っている様子で読み始めます。これからの事に期待を抱くヒカルに対して佐為は真剣に新聞の記譜を眺めます。

さて、塔矢名人は五冠になりアキラと一緒にインタビューを受けていると、記者の帰りがけに名人はここ数年断っていた新初段シリーズについて口を開きます。そして、出る代わりにヒカルを相手として指名したいと語ります。

佐為の頼み

一方、佐為はヒカルに対してかなり厳しい手を対局で見せるようになり、そして佐為のためにヒカルが広げておいた新聞の記譜も全て覚えたと語ります。そんな中、ヒカルのもとへ新初段シリーズの電話が来ます。そして、ヒカルの相手が塔矢名人であることがわかり、ヒカルは嬉しそうに佐為に報告し意気込みます。すると、佐為は「ヒカル!その対局、私に打たせてください!」と言い放ちます。

みどころ

伊角が院生をやめたことや、連絡が取りにくくなった和谷とヒカルの寂しさや、複雑な感情が泣かせます。しかし、会話の中で出てくる棋院の先生の言葉や大人の考え方などが、ある種の救いのように思えます。対比されて和谷やヒカルの子供っぽさも描かれます。

ヒカルの楽観的な考え方には相変わらす驚きますが、そのふとした発言に佐為の存在は無く、ヒカル自身が主体的に物事を考え未来を見ていることに不穏な焦りを感じるところが非常に興味深いです。根本的に佐為がこの世のものではないということが大きなポイントになりそうです。

大人たちの戦いも非常に面白いですね。エレベーターでの塔矢名人と座間王座の戦いも非常に緊張感があって楽しいです。しかしながら、塔矢名人の余裕というかただものではない感じがすごいです。 

佐為とヒカルの関係の変化、ヒカルが自分の人生と囲碁を見つめ始める代わりに、佐為が塔矢名人の対局の新聞に執着を見せるのが今後の展開を怪しく悲しいものにしていきます。一方で塔矢名人がヒカルを指名して新初段シリーズに参加するという、大変複雑でドラマティックな展開が見れます。私がこの作品を好きなのは、物語や文学として非常に面白いからであり、こうした展開がポイントの一つになっています。

最後に佐為が言い放つセリフは、今までの佐為からは考えられないような声色、というわけではありませんが、ただならぬオーラ、雰囲気を感じられる場面で本当に何度見ても感動します。

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