ヒカルの碁 第四十局 「白星の行方」

あらすじ

悩むヒカルと黙る伊角

伊角が焦りからか、石を打ち間違えてしまったところから物語はスタートします。佐為に打ち直したかを確認するヒカルですが、佐為は確かに離れたようにも見えたがはっきりとはわからない。しかし打ち直しはその場で反則負けなのでヒカル共々どうすれば良いか困惑します。

一方の伊角は黙ったまま固まっています。ヒカルは伊角に打ち直しを指摘しようか迷います。全勝の伊角に対してヒカルは一敗、喉から出るほど欲しい一勝を伊角から何としても取りたいと思います。しかし佐為は、この盤面の続きを打ちたくはないのか?逆転を狙うための手があるのだろう?と問います。

ヒカルの決心と伊角の投了

ヒカルはそれでもこの対局はこのままでは勝てないと考え、打ち直しを指摘すれば白星に転じることができるかもしれない、相手の伊角が何年もかかっているプロ試験を勝ち抜くということの厳しさを改めて考えます。伊角が黙っているのも、自分と同じように何としても一勝が欲しいからだと思い、ヒカルは意を決して口を開きかけます。

その瞬間、伊角は「負けました」と呟き対局は終わります。本当に伊角は指を離していたのだ、大きな一勝を勝ち取ったのだとヒカルは自分に言い聞かせ対戦結果を書き込みその場を後にします。ヒカルは「この後味の悪さは何だろう」と呟き落ち込みます。

それぞれの翌日とヒカルの後悔

翌日、伊角は和谷と対局しますが調子が出せず和谷は「らしくねえよ」と思い的ながら心配します。心の乱れは命取りだと和谷は緊張を崩しませんが、伊角の様子はどこか気が抜けており対局はあっさり和谷の勝利となります。ヒカルもまた、佐為が危惧していたように打ち切ることのできなかった前日の盤面が頭にちらつき調子が出せないままフクに負けてしまいます。

帰宅後、自室で昨日の一局のせいで今日は集中できなかったと言い怒りをぶちまけます。わずかではあったが逆転を狙う手があったのに、自分が弱いから目の前の反則勝ちにしがみついてしまったと言い後悔します。佐為は碁盤を指して自分が伊角の代わりに昨日の続きを打ち、対局への未練を断ち切ろうと提案します。

自分の力を信じる強さが欲しい、とヒカルは思い「昨日のような碁も今日のような碁も二度と打つもんか」と決意します。佐為はその決意は黒星の一つや二つでも払える尊いものだと語ります。

伊角の転落と越智の余裕

大会の14日目、越智は和谷との対局に少し緊張します。伊角が調子を崩したことに興味を覚えたデリカシーのない越智は伊角に、自分が昼休みにアキラがヒカルについて気になっていたなどと言ったが為に、ヒカルに怖気付いてポカをやってしまったのかと聞きます。越智は問い詰めますが伊角は無言のままその場を後にします。

その日の対局、ヒカルは勝利し越智も和谷に勝利します。越智に惜しくも負けた和谷はショックを受けますが、ヒカルから伊角がフクに負けたと聞き驚きます。越智は伊角が調子を崩していることで全勝合格が近づきアキラなんか必要ないと余裕を感じ始めます。そして15日目、相手の伊角と対峙すると越智は全勝合格の1番の大敵が伊角だったのにがっかりだ、と語っている最中、「越智、黙れ。」と伊角が静かに言います。

みどころ

大事件である伊角の打ち直しは、結局両者とも後悔を残す形での決着となり、二人とも精神面で集中がうまくいかず次の対局を落とす結果となりました。精神面がたいきょく与える影響、勝ちきることの大切さが描かれます。

ヒカルの思いにも注目すべきでしょう。結果として彼に非はないものの、自分がもっと強ければ良かったのに、目の前の反則勝ちにしがみついたことで生じた調子の狂いを後悔するシーンはかなり複雑です。それに対する佐為の提案とコメントが泣き所ですね。

いまだに全勝を守る越智はおそらく悪気はないのでしょうが、かなりイライラさせる人物として描かれています。なかなかいないタイプですが、余裕を感じさせる彼が今後の展開でどうなるのか非常に興味をそそられます。一方の伊角はヒカルとは違いなかなか立ち直ることができず、負のオーラが漂っていて気の毒です。しかしラストで見せる気迫はシリーズで最も緊張感のあるシーンとして有名です。

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