あらすじ
「TRAPNESTの意味は、罠のある巣箱。一度入ると自力では抜け出せなくなる。支配欲の強い男の考えそうな名前だと思った。」というナナのモノローグからスタートします。
レンの哲学
奈々が夏バテだということで、ナナはレンのところに行かないというメールを送ります。一方のレンはレコーディングなどで超ハードスケジュールのようで、疲れ切っている様子です。通勤用の車は事務所のクラシックカーらしくタクミのイメージ戦略も兼ねているようです。しかし、レンは車なんて動けばなんでもいい、と語ります。
そんなレンにマネージャーはレンさんは欲がないし曲もタクミの注文通り書いているが、自分はレンはパンクをやってこその人だと思うと熱を入れて語ります。それに対しても自分はギターが弾ければなんでもいいのだとレンは言います。
タクミよりレンのファンなのか、マネージャーは「タクミの言いなりなのはメンバーに限ったことではないが、みんな自分らはタクミの兵隊だ」と愚痴っぽく語りますがレンはそれに対ては声色を変えて、「タクミのやり方に不満があるならやめるべき、一緒に戦う気がない兵隊はいらない」と言いつけます。
レイラの新曲
その頃、レイラはパパラッチ対策もありホテルでシンと過ごしてます。レイラは「泣けるラブバラード」の歌詞ができないと思いつめます。どうしていつもラブソングにしなきゃいけないの？なぜ日本人は恋物語が好きなんだ？と考えます。どうやら、翌日というよりその日のうちにレコーディングが始まるようです。
なんとなく冷たいシンは、この1ヶ月サボらず練習してスタジオに行ってディレクターの言う通りに音作りをしてきたが、つまらなくなる一方だと愚痴をこぼします。正直メジャーデビューなんてどうでもいい、楽しくバンドがやれてればそれで良かったのだとシンは言います。
音楽はそもそも楽しむものだと開き直ったレイラは仕事を放棄しようとしますが、シンは「レイラさんは音楽が仕事でそれでお金をもらっているんだから真面目にやらなきゃダメだよ」と諭します。
大真面目だ
仕事に戻ったレイラは圧倒的な集中を見せますが、泣きながら「綺麗な曲、やっぱりレンは天才だね。私が作る薄っぺらな恋物語なんかにしたら台無しだよ」と呟きます。そんなレイラを見てヤスから聞いたレイラのタクミへの思いをシンは思い出します。そこにシンが寄り添い、「そんな風に涙を流せる人の歌詞が薄っぺらなわけない。トラネスが女の子に支持されるのはレイラのかく恋物語にき共鳴するからだ」と言います。
お世辞がうまいのね、というレイラに対して、「僕はこれが仕事でこれでお金をもらってるからね」とシンは言いますが、次の瞬間「大真面目だ」と言ってレイラと接吻を交わします。
予感
一方、ヤスの元にはトラネスのナオキがやってきます。家にパパラッチが張り付いているという話になり、ナナはレンのところに入り浸っているしレイラは事務所がホテルに避難してる、自分は自重してるけどレンやタクミはそのそぶりすらないと嘆きます。ナオキはタクミは今日一日そわそわしてて絶対「ハチ子」のところに言ったのだろうと言います。
奈々のことを、いきなり会いたいと言ってみたり、電話拒否したり駆け引き上手料理上手、床上手のやり手のすごい女だとナオキは言います。それを聞いたヤスは何か曲解してるし、奈々とタクミは切れたはずだと言います。しかしナオキはタクミが気に入った女をそう簡単に手放すわけないと語ります。
ナナの衝撃
一方、川べりの道ではタクミからの電話に対してノブが何も言えずに前回から時間が止まっています。様子がおかしいと気づいたナナがたまらずノブから電話を奪うとタクミの声が聞こえてきて驚きます。
ノブを連れてアパートまで来いというタクミに対して、人の家に何しに来てるんだ、ノブの女にちょっかいを出すなナナは言います。それに対して、人の女にちょっかい出したのはそっちだろうとタクミは言い放ちます。奈々に電話を変わるように言いますが、奈々はそれを拒否します。
奈々を心配したナナがすぐに向かうというと、タクミはグレープフルーツジュースと炭酸水を買ってくるようナナに頼みます。「つわりが酷くて辛そうだからよろしく」というタクミの発言に、ナナは衝撃を受けますが、ここ数日の奈々の行動や発言に対して回想し納得します。
ナナの激昂
ノブにしっかり避妊したのか？と問い詰めるナナに対して、当たり前だとノブは答えますが、それに対してナナは「なんでそんなにクソ真面目なんだよ！」とキレます。タクミの子なのだろうということが濃厚になりナナは膝をつき泣き崩れますが、ノブの子である可能性も否定できません。ノブは奈々自身がタクミの子だとわかっているのではないか？でなければタクミとあったりするはずがないと言います。
「あんたが父親になればいいよ」とナナは言い、うっかりできた子をタクミが認知するはずないとノブに言います。しかし、タクミは誰の子であっても認知するつもりだと電話で言っていたことをノブは言います。そんなのは奈々を独占するための方便だとナナは怒ります。ノブは「お前だって俺を使ってハチを自分のものにしたいのだろう」と言いナナを責めます。
「いい加減にしてくれ、そんなに言うならお前が父親にでもなれ」とノブはナナに言いますが、「お前がタクミの子を可愛がれるとは思えないけどな」と言い放ちます。自分の感情とノブの発言に対して奈々への思いを爆発させたナナは急いでアパートへ向かいます。
タクミとノブ
アパートでは、辛そうな奈々をタクミが介抱し、自分の姉が二十歳でデキ婚してつわりが酷かったことや、その時のエピソードを話します。その流れで、二十歳にしては色々と問題のある奈々に対して、「親が泣くよ、俺が言うなって感じだけどね」と冗談っぽく言います。「ガキの父親が誰でも母親は間違えなくお前なんだから、しっかりしろよ」と優しく言います。
そんな時、ノブがアパートに帰って来ます。ノブへの罪悪感に奈々は苦しみベッドから出れません。タクミがドアを開けるとノブしかおらず、ナナに頼んでいたジュースと炭酸水ではなく、ノブが夏バテ用に買ったにんにく醤油漬けしかなく、タクミはその場にノブを残し買いに行きます。三人で話し合うようなことじゃない、選ぶのは奈々だと言い残します。
切れてなかったのかよ！
ノブは奈々のところに行くと子供ができたのは本当なのか？と色々と問い詰めますが、奈々はただ泣きながら謝るだけです。「なんで謝るんだよ、切れてなかったのかよ！」とノブは怒鳴り、嘘でも信じるから弁解してくれと頼みます。しかし奈々はただただ謝るだけでした。
その頃レイラのホテルでは、シンが「近いの指輪、二人の赤い糸、今は見えない、約束はないけど、繋いだ手を離さないで」とレイラの作った歌詞を読み上げます。赤い糸について知らないシンに、運命の人と小指で結ばれている見えない糸のことだとレイラは言います。
そんな歌詞を書いたレイラですが、自分は運命論に興味はなく、どんな関係であれ信頼で結ばれるものだと思う、と語ります。
「あのさあ、ハチ。私はあんたに首輪をつけてても自分の足元に繋いでおきたかった。そんな自分が怖くて、いつもわざと少しだけ距離を置いた。友達は今もうまく作れないよ。まだ少し、怖い」とナナのモノローグとともにエンディングに入ります。
みどころ
ついに物語全体の中でも一番の修羅場になりました。前回から続く一本の電話とその時のブラストとトラネスそれぞれの様子が描かれます。
レンがバンドに対する考え方や車や音楽に関する考え方、そしてタクミへの絶大な信頼がはっきりと描かれるのが面白いですね。タクミに信頼しているし、パンク路線の曲は描かなくなってもマネージャーの表情から見るにやはりレンは怖い人物の一人のようです。
レイラとシンは相変わらずの関係のように見えましたが、練習で疲れストレスのたまるシンとレコーディングに追われているレイラの間には、お互いを求める感情が生まれ始めたようで、なかなか興味深い関係になりつつあります。
レイラさんは音楽が仕事でそれでお金をもらっているんだからちゃんとやらなきゃダメだという、シンのツッコミが個人的にはツボです。
さて、ヤスとナオキの会話はなんとなく凸凹な感じがして面白いです。ナオキのハチ子分析が凄まじく曲解の上に成り立っている考察で笑えますね。しかし、タクミと奈々がそう簡単に切れることはないだろう、という分析は確かなものでした。タクミと奈々という二人が周りからどう見られているのかというのがわかる重要なシーンです。
さて、度々登場するアパートへ続く河原の道は、大変な感情のぶつかり合いになります。ブチギレするナナと泣きながら膝を落とすノブという二人らしいリアクションですが、だんだんとナナの発言の論点が支離滅裂っぽさを帯びていきます。
みんなに対して優しいノブのノブらしい一面、ナナの性格が根底に抱えている危うさといったものが浮き彫りになるシーンでもあり、ノブが気の毒になります。
一方のタクミに関して言えば、懐が不快というかどっしり構えているというか、余裕や貫禄を感じさせます。支配欲の強いやばい人に間違いはないのですが持ち前のクレバーさのようなものが薄々感じられる人物です。
物語の終盤、ノブから問い詰められてもただただ謝るだけの奈々の反応は、男女で賛否が分かれそうですね。いずれにせよ、ノブと奈々とタクミの三人の関係はこの後なんらかの動きがあることは間違いありません。
華やかな芸能界やアグレッシブなインディーズバンドの世界のなかで蠢く重々しい男女関係という構図は色々と考えさせられます。恋愛の教科書とも言われる原作ですが、事実のみをおって分析するのではなく、登場人物の感情の動きにも着目すると楽しそうです。