あらすじ
「ねぇナナ、私たちの出会いを覚えてる?」
「私は、運命とかかなり信じちゃうタチだから、これはやっぱり運命だと思う。笑ってもいいよ」
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ナナとの出会い
物語を通して、過去のある一点からの回想であるこの作品は、小松奈々のモノローグから始まります。
雪の降る地方に住むごく普通の専門学校生である小松奈々は、東京の美術大学に進学する彼氏を追って憧れの上京を決意します。天真爛漫な奈々は、家族への説明もそこそこに勢いと思いの向くままに新幹線に乗り込みます。
しかし、新幹線が雪で徐行になってしまうアクシデントが発生。そこで偶然、ギターを持ったミュージシャンらしい人物、大崎ナナに出会います。
同じ名前、同じ年の二人は縁を感じ、長旅の5時間、奈々は惚気たおします。
章司との再開
東京に着いたナナはそっと奈々と別れます。人懐っこい奈々は寂しさを感じますが、地元から先に状況した章司を含めた3人と再開を果たし奈々は喜びます。
章司の家に居候する奈々は良妻というか新妻のごとく家事をしますが、仕事探しや物件探しはそっちのけのため、章司に自立を諭されます。
ナナとの奇跡
安い物件を探す奈々は、れんが造りの古い川沿いの建物の7階を訪れます。するとなんと!新幹線で知り合ったナナと再開し、同居することとなります。
「私が生まれるよりずっと前に建てられたそのマンションは、ハイカラとでも申しましょうか、西洋かぶれの洒落た造りで、私はひと目で気に入りました。難をいえば、7階建なのにエレベーターがないことぐらいで、田舎育ちの私には、川沿いという緑の多い環境にもやっぱり心惹かれるものがありました」
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みどころ
まずは時代背景ですね。ケータイ、絵文字、車内喫煙などが時代を感じさせます。 奈々が傘を駅のゴミ箱に捨てるシーンもなかなか良いですよね。
物語後半で「クズやなぁ」的なポジションになる章司に関しては、奈々の上京に関してしっかりと考えており、この時点では非常に誠実で良い人として描かれています。
奈々の髪型と服装の変化にも注目です。ストーリーが進むにつれて、田舎から出てきた少女から都会の乙女に変貌しつつある様子が巧みに描かれています。
全編を通して、達観的なモノローグ調の語りで彩られつつも、当の奈々たちが非常に天真爛漫で純情に描かれているのが面白さのポイントだと思います。