ヒカルの碁 第七十局 「佐為がいた…」

あらすじ

伊角の思い

プロ試験のために帰国した伊角が、ヒカルに自分の為に一局打って欲しいと頼み込むところから話は始まります。ヒカルは佐為がいなくなった一件から、囲碁を打たないと心に決めており、対局を渋ります。

伊角は、中国に行きプロになりたいという意識が強くなったことや、棋士たちは戦いながら同じ歩行に歩んでいて、そこからヒカルがいなくなったら残念だ、と語ります。ヒカルの心は揺れますが、どうしても打てないと断ります。

俺のために打ってくれ

事情は分からないが辛そうな様子のヒカルを目の当たりにしつつも、伊角は食い下がり「一局だけでも良いから自分のために打ってくれ」と頼みます。頼み込む伊角のためなら、ということでヒカルは思い直し、覚悟を決め心の中の佐為に謝りながら対局を受けます。

心の中の佐為に、囲碁の道を進む伊角のために仕方なく打つんだ、この一局だけは良いだろうと問いかけますが、返事はなくヒカルは悲しみにくれながら対局を始めます。

真剣勝負

対局の最中、久々の対局にヒカルは興奮しますが、佐為に悪いので「ワクワクしちゃいけない」と自分に言い聞かせながら対局を進めます。二人の対局は真剣勝負で、両者とも一歩も譲らない戦いを繰り広げます。お互いに相手が強くなったと感じながら戦いは進んで行きます。

佐為がいた

戦いもいよいよ大詰めを迎えようとしたその刹那、ヒカルは自分が石を打つその瞬間、佐為を感じます。ハッとして後ろを振り返りますがそこには誰もいませんが、確かに佐為を感じヒカルは動揺します。そして、涙を流しながら自分の打つ碁の中に佐為がいたのだと悟ります。佐為に会う唯一の方法が囲碁を打つことだったのだと知り、「俺、打ってもいいのかな?」と自問し泣き続けます。

「何か、苦しんでたみたいだな」と伊角が優しく慰めます。そしてヒカルは吹っ切れた様子で、棋士として「打つ」という決心を固めます。自分が再スタートを切るきっかけを作ってくれた伊角に感謝を示し、二人の対局は再開します。

宣戦布告

ヒカルが棋院にくると、桑原に遭遇します。何かを感じた桑原は説教をする同僚を遮り、「お前のライバルは5階におるぞ」と一言声をかけます。するとヒカルは階段ですぐさま駆け上がります。

5階では本因坊リーグ戦を挑戦権をかけた三次予選の決勝が行われており、アキラが勝利を納め一同が解散したところです。そこにヒカルは現れ、「俺、碁をややめない!ずっとこの道を歩く!これだけ言いに来た」と宣言をします。アキラは「追ってこい!」と一声返します。

桑原本因坊は同僚に、「囲碁は一人では打てない。等しく才長けた二人がそろう必要があり、そうして初めて神の一手に一歩近づくのだ」と語ります。

みどころ

神回ですね。以上。

伊角からの対局を受け、久々に碁を打つヒカルの興奮や、苦悩がよく描かれています。が、やはりポイントは終盤の一手に佐為を見出すシーンでしょう。シリーズ全体を通して能天気でガキっぽかったヒカルが初めて見せる苦しみと悟りを交えた涙は、心動かされた人も多いのではないでしょうか。

少年漫画にありがちな単純な精神構造ではなく、ここまでのストーリーの流れ全てを含めた、本当に複雑な精神描写として味わい深いシーンです。そして、最後はエレベーターをよそに階段を駆け上っていくところも非常に印象的です。

神回なのでこれくらいにしておきましょう。

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