ヒカルの碁 第六十三局 「もう打たない」

あらすじ

資料室

広島から帰ったヒカルは、棋院の中でお化けが出そうなところとして紹介された、棋譜の保管庫に案内されます。そこでヒカルは秀策の棋譜を見たいと言います。ヒカルは自分が秀策の棋譜を見たことないなと気づきます。

資料室に一人残されたヒカルは、秀策すなわち昔の佐為が打った棋譜を分析しようとします。「現在の佐為を知っている自分にとって昔の佐為なんてどうってことないだろう」と思い棋譜を開きます。

後悔

棋譜を読み始めてすぐ、ヒカルは秀策すなわち佐為が本当に天才だったことに気づきます。佐為の手筋に感嘆し、もっと佐為に打たせれば良かった、自分よりも佐為に打たせる方が良かったと後悔の念にかられます。

なぜ今までそう思わなかったのか、佐為が打った方がアキラも喜んだろうに、と思ったヒカルが秀策がずっと佐為に打たせていたということを思い出します。自分と違い、佐為と出会った時にすでに十分な実力があった秀策は、天才棋士である佐為の力を見抜いていた。ゆえに佐為に打たせていたのだとヒカルは悟ります。

時間を戻して

自分は囲碁なんか全然わからなかったから佐為の力なんて分からなかった。自分が打ちたいと言い続け、佐為の力をわかるようになってからも自分本位で囲碁に向かい続けてきた自分は、なんて馬鹿だったのだろうと自分を責めます。

「佐為に打たせてやれば良かったんだ。はじめから。誰だってそう言う、全部佐為に打たせれば良かった。自分なんかいらない。もう打ちたいって言わないから、だから神様、お願いだ、佐為と会った一番はじめに時間を戻してくれ」とヒカルは叫び号泣します。

失踪

そのすぐ後の大手合いの日、和谷とアキラが棋院で待っていてもヒカルは対局場に現れません。結局時間になってもヒカルが現れることはありませんでした。

ヒカルは学校で、佐為に全部打たせてやるから戻って来い、自分はもう囲碁を打たないと嘆きながらぼんやりと過ごしています。若獅子戦の会場にもヒカルの姿はなく、連絡も無いのに対局に現れないことが話題になります。それを聞いたアキラは激怒します。

もう打たない

学校でアカリが久しぶりに打ってくれと声をかけますが、ヒカルは「もう打たない」の一点張り。プロの対局について聞かれても「もう打たない」としか言いません。ヒカルはもう勉強会にも碁会所にも行かないと決意します。自分に佐為は超えられない。と一人悲しく思い、帰宅します。

和谷や本田といった院生仲間たちは、一人暮らしを始めた和谷の家に集まります。そこで、ヒカルが棋院に現れないこと、伊角が中国に勉強しに行ったことが話題になります。

アキラの問い

一方、波瀬中にはアキラがやって来ます。ヒカルを探しているアキラに金子が、ヒカルなら図書室にいると教えます。ヒカルは図書室でただボーッとしているようです。そんなところにアキラがやって来ます。

突然のアキラの登場にヒカルはめちゃめちゃ驚きます。アキラが若獅子戦や手合いに来ないことを問い詰めると、「俺なんかじゃダメなんだ」とヒカルは言います。「僕はそう思わない」とアキラはヒカルを睨みつけます。しかし、ヒカルはアキラは自分の中の佐為を見ているからだろうと思い、「もう打たない」と告げます。

ふざけるな!と激怒するアキラに対してヒカルは、アキラが打ちたがっているのは自分ではなく佐為なのに、佐為は消えてしまったと嘆き、「ごめん」と言って逃げ出します。「なんの為にプロになったんだ!僕と戦う為じゃなかったのか!」と叫ぶアキラを後に、ヒカルは必死に逃げ佐為を思います。

みどころ

ヒカルがついに囲碁を打たないと言い始めます。ヒカルが打たないと言い手合いを休んでいる最中にも、時は流れていくことがやんわりと描写されます。

プロになり色々とありましたが、それぞれにはそれぞれのストーリーがあるのだなと感じさせます。懐かしい「伊角」の名前も出て来ます。

そんなことはどうでもよく、作品屈指の名場面であるヒカルの叫びがこの話のメインテーマです。佐為の秀策に関する階層や思い出話、ヒカルが佐為と出会ってから佐為が消えるまで、一連のストーリーが全てフラグとしてヒカルの絶叫と涙を演出するというシナリオはかなり破壊力があります。

ストーリーやプロットがよくできているアニメ、漫画はたくさんありますが、物語の終盤での主人公の一人の消滅、そしてそれに対する後悔と嘆きが一気に押し寄せる描き方は、なかなかのものです。

ヒカルに会いにアキラが来るところなども胸アツ展開ですが、一筋縄では行かないようです。アキラの執着ぶりもすごいですが、ヒカルの打たないという決意もまた並々ならぬもののようですね。

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