NANA 第40話 「ブラスト、デビュー!」

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あらすじ

「別に眉をしかめられるほどの厳粛な状況でも、深刻なニュースでもない。平和な朝に殴り込みのライブ映像と、やたら化粧の恋ボーカリストの醜聞。インパクトは十分。勝算はあると思った。

大炎上と苦悩

朝のニュースに突如登場したブラストとナナは一躍世間を賑わせます。男を利用して売り込んだというような悪い噂や、そのナナのその風貌に社会は盛り上がります。

レコード会社では騒ぎが大きくなったのに乗じてブラストを売り出そうという動きが活発になりますが、川野はこんな騒ぎに便乗して売り出しても祭り上げで叩かれるだけだと、苦悩します。ナナたちが才能があるのに会社のやり方で潰された他のアーティストたちと同じような目に合わせたくないと言いますが、川野も今更後戻りはできないため、仕方なく落ち込みます。

ヤスはガイアレコードのやり方や考え方から、話題性が金になると踏んだ上層部がブラストのデビューに乗り気なのだろうと分析します。実力でのし上がろうとしたナナをヤスは気遣いますが、ナナは覚悟を決め、どんな手を使っても売れてやろうと豪語します。

ヤスの分析と諭し

一方のノブはレコード会社のやり方や自分のやりたい音楽づくりやこだわりとの葛藤で苦しみます。ヤスは、レコード会社が最初からブラストを売り込むことを念頭に今回のスキャンダルに踏み込んだことは明らかであると語りノブは面白くなさそうに落ち込みます。しかし、ヤスは「ガイアはその気になれば莫大な予算を出してくれること、サウンドにこだわっても世間に聞いてもらえなきゃ意味がない。メジャーで売れることを目指すならなるべくお金を出してもらえるところと組むのは得策だろう。納得行かないこともあるだろうけどな」と言います。

「俺はここのところ納得のいかないことだらけだよ」というノブにヤスは、「いいかげん気づけ、世の中必ずしも正義が勝つようにはできていない。負けたくないなら、したたかになれ。それが嫌なら実家に帰れ」と言い放ちその場を去ります。

再びモノローグ

「テレビをつけたら、午後のワイドショーでレンが報道陣に囲まれていた。国際空港のロビーを無言で足早に歩くレンを見て、また少し置いてけぼりをくわされたような気分になった。私はレンがどこへ行こうとしているのか知らない。何を目指しているのかも知らない。いつか、あの倉庫街でまた二人で暮らそうと話したことが、ボーカリストとして成功することより、なんだかあり得ない夢物語のように思えてきた。」とナナのモノローグが挿入されます。

タクミと仲直り

淳子の家にいる奈々が喧嘩したタクミがレンと一緒に外国に行ってしまうのだと困惑し、奈々はナナが頑張っているから自分実家に戻らず頑張らなきゃと意気込みます。そして、タクミにその日の朝の事を謝ろうと電話すると、タクミは忙しかったのか、あまり覚えていなかった様子です。

タクミは奈々にこれからイギリスに半月ほど行くことになる事を伝え、寂しくなると悲しむ奈々にこれからの事や、両親への挨拶、お土産や婚約指輪についてもコメントし奈々は喜びます。

ノブとナナそれぞれの思い

「ようやく私たちの夢が叶う、だけど、追い求めている理想と押し寄せてくる現実は、いつも睨み合ってなかなか丸くは収まらない」とナナのモノローグが挿入されます。ナナはノブと部屋でビールを飲みに来ます。

ナナは「私と関わらなきゃノブはもっと平和な毎日を過ごせたはずなのに」と申し訳なさそうにしますが、ノブは「俺はナナという名の女に振り回される運命なのだ」と語ります。「あんたには悪いけど、私の中からハチは消えない」とナナが言うと「俺の中からも消えなさそうだ、でもハチの中では俺は消えたんだろう」とノブは寂しそうに語ります。

奈々の幸せとナナの作戦

一方の、奈々は淳子の家で月を眺めます。「私ね淳ちゃん、あの満月の夜がたぶん人生で一番幸せなひとときだったよ。欲しいものが全部手に入ったような気がして、夢と希望で胸が一杯になって、未来がキラキラ輝いて見えたの。あんな限りない幸せに満たされるのは、もう二度とないよ」と語ります。

その頃ノブは、奈々に対して諦めがつかない自分に苦悩します。するとナナは望みをしてず「ハチ公を取り戻せ作戦」に協力しろと言いノブは意気投合します。

「私の作戦は簡単だ、ハチにとことん甘い夢を見せてあげること。ハチの物語の中でブラストがとびきりカッコよく登場し続ければ、いつかは戻ってくる。シビアな現実を冷酷に突きつけるタイプのタクミには、甘ったれのハチを幸せにすることはできない」と自問自答します。

いよいよデビュー

そして、ついにナナは契約書に印鑑を押します。一方のイギリスでは、タクミがレンに週刊誌を見せ、嫌な予感がすると語ります。一方の奈々は、ブラストのpデビューの日を美里から聞き喜ぶとともに、高架下のトンネルでナナの悪口を見つけ、それをスプレーで消しにかかります。

「あのさぁ、ハチ。私はもうアンタの物語のヒーローにはなれないけど、今も私の物語のヒロインの名前は、まだ、とびきり可愛いアンタだよ」と言うナナのモノローグで幕を閉じます。

みどころ

二人のナナそれぞれの人生が進む中で、なんとも言えない切なさや悲しさが押し寄せる回です。

大炎上というか、ニュースと週刊誌によってバンドが着目されセンセーショナルに取り上げられる感じは、SNSが普及した現代ではあまり考えられないというか、あの時代ならでは感があります。

ブラストの面々とレコード会社そして川野という三者の思惑や心情が上手く描かれており、非常に面白い回でもあります。不本意な形とは言えブラストは正式にデビューが決まることとなり、物語は大きく展開していくことになります。

意気揚々とデビューを楽しみにする、しているように見えるナナに対して、失恋(というにはあまりにも酷だった)から立ち直れないノブは色々とネガティブに思いつめます。そんなノブに対する「負けたくなければ、したたかになれ」と厳しく言い放つヤスはいつ見てもかっこいいです。

一方、淳子の家にいて上の空で自分の幸せだった満月の夜を語る奈々は本当に泣けますね。自分の一番幸せだった時、取り戻せない時間がノブとのひと時であること、そして今はタクミの子を身ごもっていること。ここまで見せてきた弱さや嘆きとはまた違った奈々の苦悩や悲哀が感じられます。

すっかり、タクミの奥さんとしての覚悟ができている奈々に対して、「ハチ公を取り戻す」と豪語するナナとノブという対比が非常に切なく、それでいて奈々がブラストを応援し続けているところが微笑ましくもあります。

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