あらすじ
二人のナナそれぞれの想い
奈々「私は今もナナの名前を呼び続けている。どんなに痛くても。答えてもらえるまで」
ナナ「約束を果たせなくてごめんね。あんたは覚えちゃいないだろうけど、広い庭がある立派な家、私は本気で建てるつもりだったんだ。海の見える高台に、最新のシステムキッチンと地下スタジオ。あんたの部屋のクローゼットには、流行りの服を絶やさず取り揃えて、男に泣かされてばっかのあんたが、何度、出戻って来ても笑えるように」
というモノローグの後、ナナの上京シーンが流れます。ナナが東京への片道切符を買いホームに来ると、見送りに来たヤスがいます。皆様にはもうおなじみのシーンでしょう。ナナのプライドやそれぞれの思い、未来の交差点となり物語の出発点となるシーンです。
花火とナナの心
そんな、ナナの物語の回想から物語がスタートします。「あれは忘れもしない、2001年3月5日、二十歳の誕生日、私はあんたと出会った」というモノローグから始まり、回想が始まり、ナナの奈々に対する印象がさらっと語られます。
さて、付き合ってまもないノブと奈々が約束した花火大会はあいにくの台風となります。しょんぼりしている奈々に対して、どうせ花火大会は中止だと言い家でシンとテレビを見ているノブにナナから電話が入ります。「ハチ子の浴衣姿見たくないの?」というナナの挑発に乗せられたノブはシンとともに結局アパートに来ます。
「ハチは、うちのバンドにとってはペットみたいな存在で、よく言えばマドンナ。ハチがそこで笑っているだけで何となく場が華やぎ、活気付いた。どんなに上手なメンバーが加わることよりも意味のあることに思えた」とナナは語ります。
台風が過ぎてすぐ河原はなくなっていてもブラストの面々は近くで花火に興じます。楽しそうに花火をする奈々を見てナナは、「あんたは気づいちゃいないだろうね。自分の一挙一動が、今や台風並みの勢力を持って私の心をかき乱しているなんて。私はまるで初めて恋を知った少年のように、高ぶる心が決壊ギリギリ」と思います。
レンの家で
翌日、真夜中のレンの家でナナは味噌汁とご飯を作っています。奈々のことについて相談するナナですが、レンに物事を暗く考えすぎだ、奈々のことをどう思おうと、相手もナナに懐いているのだからそれで良いんだとレンは言い、ナナは何となく納得しそうになります。一方で、レンに言われることに自分が影響されやすいことに気付き、昔はともかく縁を戻すつもりもなかったのにいつの間にか味噌汁を作っている自分に幻滅します。しかし、そこは男と女。レンの優しく甘い言葉とリードに結局ナナは負けてしまいベッドで一夜を過ごします。
朝ごはんを食べるレンに対してコーヒーで済ますナナは、今日はバイトがあって夜はスタジオ練が入るから昼間にしっかり稼がなきゃいけない。デビューの話はまだ進展がないと語ります。その頃の自分たちは会える時間もほとんどなくお互いのことをゆっくり話す暇もなかったこと、余計なことを言わずお互いを求めるだけである意味都合が良かったとナナのモノローグが入り、それをバックにパパラッチがレンを盗撮していることが発覚します。
カレーと夏休み
さて、パパラッチからパパラッキョに、ラッキョからカレーに話が飛んだところで、カレーの試食店員の奈々が、炊きたてのお米の匂いを嗅いで具合を悪くするシーンが突如として流れます。体調不良ということでバイトは休みになります。
タクミは「カレーなどという庶民の食べ物は食べない」と言っておきながら社員食堂でカレーを食べます。同席したレンに「普段は忘れてるのに、うっかり思い出すと無性に恋しくなるのはなんでだ?」と問うと、なんだかんだ好きなんじゃないの?とレンに言われます。寂しそうなタクミは、「早く終わんないかなあ、夏休み」と愚痴をこぼします。
ブラストはというと、現在は仮契約ということで本契約のためにレコード会社が諸々と準備を進めており、その間ガイアのスタジオをブラストは自由に使うことができる、ただし他の会社との契約はしないという暗黙の了解の中にいます。そんな話を美里にシンが英語の宿題を手伝いながら話します。英語もできるのでハーフではないのか?という質問に対して、育ったのが外国なだけで両親とも日本人だ、とシンは語りますが、どうやらワケありの様子です。
一方、具合が悪くなりバイトを休んだ奈々はビルのトイレで妊娠検査キットを使い、陽性の反応が出てショックを受けます。
ナナの夢
ノブと一緒に引越し作業のバイトをするナナは目の前の豪邸を前にして驚くノブに対して、自分が将来建てる家はこんなもんじゃない、見てろよ大魔王!と豪語します。すっかり大魔王の信者だなというノブに対して、「違うよ、魔王が私の手下なんだよ!」とナナは笑顔で返します。
「あの頃、私には譲れない夢があって、おかげでたくさんのものを手に入れ、かけがえのないものを無くした。だけど、がむしゃらに生きたから、もう何も悔やんでなどいない。ただ、心残りは一つだけ。ねえ、ハチ、あんた今、笑ってる?」とナナのモノローグで物語は閉じます。
みどころ
嵐の前の静けさというか、夏休みの終わりというか、物語が動き出す香りが感じられる回です。シンの過去やパパラッチの影といった不安要素も少しですが描かれます。
物語の出発点である二人のナナの出会いから、ナナの目線で物語が描かれるようになります。ナナの奈々に対する感情や想い、考え方がしっかりとナナの言葉で語られるのは新鮮で面白いですね。そしてまた、レンとナナの依存体質同士の関係も色濃く描かれます。シン曰くエキセントリックな二人な訳ですが、もはや否定できないほどでしょう。
それぞれの夏休みが終わり、カレーが話題になります。離れていると無性に恋しくなるものの例えとして見事なメタファー?になっていますし、タクミがカレーを食べるシーンはなかなか楽しいです。
そんな面白さもつかの間、奈々が妊娠したという描写が流れ、最後に再びナナのモノローグに繋がる演出は個人的にかなりグッと来ますね。
物事を暗く考えすぎるとレンから指摘されるナナによって語られるこれからのシナリオは一体どんな様相を呈していくのか、目が離せない展開となります。