あらすじ
ブラスト旋風と信者
ライブで歌うナナの絵を背景に、「これでプロになれないなら、世の中間違っていると思った」という奈々のモノローグで物語はスタートします。都内3回目のライブにしてブラストはすでに人気バンドのようです。開場時間は早まり、招待客の京介と淳子すら中に入りにくい状況です。招待客ということで二人は入れてもらえることになりますが、おそらくナナの地元からのファンと思われる二人にその権利を譲り、二人は帰ることにします。なんとか中に入れた二人のファンがブラストの人気やすごさを語る中、怪しげなおじさんがその会話を聞いています。
地方から来た客や出待ちしようとする客、会場の外に漏れ出てくる音を聴いている客などを見た淳子と京助は、近くのカフェで改めてブラストの人気ぶりに感嘆します。信者のようなファンと奈々について考えるとともに、プロとしての成功には実力以外のものも必要なのだと語り合います。
ガイアレコードと奈々の想い
一方のライブ後、怪しげなおじさんがブラストの面々と面会しています。カリスマ性や実力も申し分なく、心踊らされたと語るその人はレコード会社の人で、ブラストを寿司に誘います。
奈々たちはブラストのために打ち上げの順位をしており、ナナから今日はレコード会社の人と食べに行かなきゃいけないから打ち上げには行けないと電話がきます。なんとか取り付くろう奈々ですが、ショックを受け空回りする自分に対して落ち込みます。
ナナの寂しさとそれぞれの夜
ナナが会場から出ると出待ちのファンが大勢詰めかけます。そんなシーンを背景に奈々の切ないモノローグが挿入されます。ナナにとって自分は優先順位で言えば下の方の存在なのではないかという寂しさを奈々は自問します。美里がいるのでタクミに当分の間アパートに来ないように奈々がメールすると、タクミから「居候しているのは女か?」と電話がきます。その電話はすぐに切れてしまいますが、奈々はかけ直しタクミに会いたいと訴え、夜更けにタクシーで出かけます。
奈々から連絡が入ったタクミはマネージャーに頼みホテルをとったようで、レイラも別でホテルを取ろうとします。ブラストのヤス以外の三人はタクシーに分乗して帰りますが、そんな中シンのケータイに連絡が入り、シンは急いでどこかに向かいます。ナナは明日の朝からバイトだという奈々に会おうとまっすぐアパートに向かいます。しかし、ナナはすでに出かけた後です。奈々を怒らせてしまったのかと心配する美里に対し、ナナは「どうせ男だよ」と元気付けますが、その脳裏にはタクミが浮かびます。
冷蔵庫の御馳走
ナナは新しい電子レンジが冷蔵庫の上に置いてあることに気づきます。美里曰く、奈々がローンで買ったようです。そんな金あるならエアコンを買えば良いのにと悪態をつくナナですが、冷蔵庫を開け奈々が用意してくれたたくさんの御馳走をみて言葉を失います。美里から奈々がブラストのために用意したものだと聞き、電話口で打ち上げの準備はまだしていないよと言った奈々の言葉を思い出したナナはショックで打ちひしがれます。
ねえナナ、例えば私たちが恋人同士なら、それは抱き合えば埋められる程度の隙間だったのかな?それとも、こんな寂しさを誰もが持て余してるのかな?ナナを独り占めしたったんじゃない、ナナに必要とされたかっただけなの。という奈々のモノローグとともに、奈々とタクミ、レイラとシンの様子が描かれます。
みどころ
ついにブラストのプロデビューが現実味を帯びてきますが、それに伴い二人の奈々の距離は少しずつ離れ、すれ違っていきます。地元のバンドだった時代から応援しているファンの心理というか、バンドへの熱の入れ方というのがよく描かれている回でもありますね。
なんとなく言葉にできず、もやもやとひたすら寂しさを募らせる奈々の想いが、ラストのモノローグで未来から振り返るように的確に言葉で表されている点が個人的にはグッときます。
タクミと奈々、レイラとシンというなかなか波乱の起きそうなカップルの描き方、奈々が電子レンジに気づいた後の冷蔵庫の御馳走など、非常に細やかで効果的な演出が素晴らしい回です。自分の人生を見つめ、焦りそして誰かに必要とされることへの憧れなど、誰もが抱える悩みやすれ違いが緻密に描かれている素晴らしい漫画でありアニメであると改めて認識させられます。