あらすじ
「もう5月だというのに、夜風がやけに冷たく感じ羅れたりして、山間にある私の生まれ故郷と大差ない。東京はもっと、温かいところだと思っていた。」
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修羅場!
淳子のアドバイスもあり奈々は章司のバイト終わりを待つことにします。奈々とナナは恋愛観について対立した意見を持ちますが、ナナは奈々に上着を貸して一緒に待ってあげることにします。寒い中ナナも待たせてしまって奈々は申し訳ないと思いますが、胸を過ぎる不安を一人では抱えられないようでナナもそれを静かに悟り何食わぬ顔で一緒にいてあげます。
「私はそれ以上何も話せなくなって、ナナが小声で口ずさむ脈絡のない歌を聴き続けた。ナナの瞳は濁りがなくて、ろくに星も見えないこんな街より、真っ白い雪景色が似合う気がした。」
「私は本当はとても計算高くて、何の見返りも期待せずに章司のことを待ち続けるほど、もう純粋じゃなかった。でも、純粋なフリをした。ナナに嫌われたくなかったから。」
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さて、いよいよバイトが終わる時間になるとファミレスから人が飛び出てきます。それは取り乱した幸子で章司はそれを追い、章司と幸子は二人のナナの見てる前で抱き合います。そこからはもう典型的な修羅場です。激昂するナナ、ショックで何も言えない奈々、章司を庇う幸子……
「裏切りを許せるほど大人にはなれなくて、傷ついても縋り付けるほど、一途にはなれなかった。私の負けだよ。」
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慰めと戒め
「次の日私は、まるで病人みたいにベッドから起きれず時を過ごした。何も考えないように、何かに気を紛らわせていたいのに、何もする気が起きなくて。」
「何度も、章司の夢をみた」
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翌日、奈々は起き上がることもできずに寝倒します。時々章司の夢を見ては悲しみに暮れます。すると、玄関のチャイムがなってレンが家に来る夢を見て目を冷まします。
起きると本当に玄関のチャイムがなっており、章司から連絡を受けた淳子が慰めにやってきます。淳子は奈々に同情しつつも章司にも理解を示し、奈々にも落ち度があったと優しく諭します。
チケット
何もせず夜になるまで奈々がぼんやりと過ごしていると、ナナがお弁当を買って帰宅します。母親から郵便が来ており、中にはトラネスのライブチケット、それも最前列が入っていました。
「今にして思うと、その頃の私はまるでツキに見放された毎日で、そこまでクジ運が良いわけなかった。アレは、神様がナナのために用意してくれたチケットだったね。」
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みどころ
章司を待つ間、奈々とナナの恋愛観の違いが浮き彫りになるのが非常に面白く描かれています。また、ナナの故郷についても語られます、一年の半分は雪に埋れているというのはどのあたりなのでしょうかね。
修羅場がやばいですね。怒るナナと庇う幸子と対照的に、章司と奈々が黙っているのがリアルです。奈々の夢でレンが来るのがチケットのフラグというか予知夢というか、そういう演出も面白いですね。
みどころはやはり、淳子の奈々への慰めと諭しの言葉でしょう。「恋愛だって人間同士の関わり合いなんだから……相手を思いやれなきゃ、うまくいきっこないよ」は名言として親しまれていますね。決して片方だけの肩を持つことなく、自分の意見を言える淳子の大人っぷりにはかなり感心させられます。
最後のチケットに関わる予知夢とモノローグもなかなか泣かせますね。