ぼくはこうして大人になる 長野まゆみ

ホフマンがオススメの作家さんである長野まゆみさんの作品を紹介します。例によって中学生の少年が主人公です笑。

概説

だて眼鏡をかけ、まともな優等生を演じながら、平穏な中学校生活を送るはずだった。季節外れ、いわくつきの転校生・七月(なつき)がやってくるまでは……。十歳違いの双子の姉兄によって、ある時期まで自分を女だと思い込んで育った印貝一(いそがいはじめ)は、人には云えない不安を抱える生意気でユウウツな十五歳。鎧をまとい、屈折した心と体をもてあましながら思春期をしのぐ、繊細で残酷な少年たちの危ういひと夏を描いた鮮烈な青春小説!

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あらすじ

 主人公である一(はじめ)は、幼少の時から兄弟たちによって「自分が女である」という洗脳を受けて育った男子中学生です。ただし、描写から考えると、性同一性障害ではなさそうです。同性の体に少なからず欲情する、そんな秘密を隠し、学校では医者の息子の「ザ・優等生」として過ごしています。

学級でも部活でも中心人物で、面倒見の良い生徒として認識され男女問わず多くの人から信頼されています。生徒だけでなく教員の性格分析、海辺の町の家族関係や、地方の政治まであらゆる事柄を考えて、自分の中学校生活を平和にするべく立ち回ります。

そんな彼がある日、姉の頼みで葬式に行くとそこに謎の美少年である七月を見かけます。後日、その七月が学校に転向してきたことをきっかけに、一の学生生活は何やら波乱が起き始め、次第に自身に起こったある出来事と対峙することになります。

みどころ

紹介しておいて言うのも何なのですが、本作品は特に限定的に語ることのできない、「過不足なく完璧な作品」系の作品なので見所を取り上げるのが非常に難しいです。巻末の解説文にも同じような事柄が書いてあって驚きました。

「ある特定の層」の心を掴んで離さない長野作品ですが、その層に属していない人にも、青春小説としてひたすらに彼らの世界を鑑賞する楽しみ方ができる作品だと思います。つまり、長野作品の初心者にもオススメできる作品です。

青春小説というと、色々と自分の過去を思い出してみたり、小説の世界や人物にに憧れてみたり、といった読み方が多いようですが、この作品はそこらの作品とは一線を画します。主人公たちの美しくも悲しく儚い世界に、決して読書自らを投影するのではなく、ただ長野作品の世界と文章を味わう、という楽しみ方がオススメです。

長野作品は、それ自体が一つのジャンルとして成立するほど独特で、この作品も初心者向けとはいえ長野ワールドが大爆発している作品です。少し変わった複雑な家族や、そこに囚われる主人公たち、特徴的な文体など、長野先生のエッセンスとキーワードを楽しみつつも、爽やかな青春味を楽しめる。そんな作品です。

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