ヒカルの碁 第五十三局 「saiの告白」

あらすじ

名人の容態と佐為の心配

ヒカルのプロデビュー戦は因縁のライバルであるアキラとの対局の予定でしたが、アキラの父である塔矢名人が倒れたことによりアキラは対局に来ることができず、ヒカルの不戦勝となります。

家の電話で塔矢名人の様子を聞いたヒカルは、いつか名人と互い戦で対局することを夢見ており、その容態をきにする佐為を安心させます。そして、佐為に言われてヒカルはお見舞いに行くことにします。

病室にて

塔矢名人はどうやら心筋梗塞で倒れたそうで、囲碁教室だけでなく囲碁業界全体が大騒ぎになったそうです。どうやら倒れたのは緒方と塔矢名人が戦う十段戦第三局の前日だったらしく、緒方は不戦勝となりますがすぐに第四局があるとのことで師匠を気遣います。

碁会所の近しい関係者と緒方たちが面会している中、ヒカルが病室にやってきます。君が来るとは意外だなと緒方九段は言いヒカルは少し緊張します。しかし、そこにいたのはアキラとヒカルが最初に対局した碁会所の人で、ヒカルのことも覚えているようです。

ヒカルがアキラに勝ったことが話題にのぼり、緒方九段もその対局を見たかったと言うなど、当時の佐為とアキラの対局がほとんど誰にも知られていないことをヒカルは知ります。

名人とネット碁

先生を気遣い、これを機にしばらく静養したらと周りが気遣う中、緒方は名人にネット碁を紹介していたらしく、ネットの囲碁なら病室でも対局し囲碁の勉強ができると言います。ヒカルは名人がネット碁を打つと聞いて考え込みます。

一方の緒方九段たちはヒカルが以前インターネットカフェにいたことや、ネット碁に対する反応から、ヒカルがネット碁をやっていると勘づき、以前アキラがネカフェにいるヒカルを訪ねて行ったことなどを思い出します。そのことを初耳だった緒方が詳しく話を聞くと、それはちょうどアキラがsaiと打った夏休みごろの出来事だったと発覚します。緒方は当時のアキラの様子を振りかえり、saiはヒカルであるあるいは何らかの繋がりがあると考えたのだろうかと興味を掻き立てます。

ヒカルの頼み

ヒカルは名人と二人きりになり、名人にネット碁について聞きます。名人は離れた人とも対局できるネット碁を賞賛しつつも、碁石の感覚がなく自分には合わないと思い、入院している間だけの手慰みだと語ります。

それを聞いたヒカルは、自分の知り合いでネット碁をやっているsaiと言う人物が、名人と打ちたがっていると語ります。するとなんと名人はsaiの存在を知っていると言いヒカルも佐為も驚きます。どうやら以前アキラとsaiが打った対局を緒方が名人に紹介していたようです。

名人はヒカルとsaiが知り合いだったのかと言いますが、色々とバレるとまずいヒカルは自分とsaiの関係を内緒にしてくださいと名人に頼みます。saiに興味がある名人は素性を明かさないことに不信感を抱き、打ちたがっているのであれば面と向かって打つべきだと言います。

名人のプライド

ヒカルは計画が失敗したと残念がりますが佐為は自分の声が聞こえない相手に必死に対局を呼びかけます。ヒカルはアキラとの対局でsaiの実力は知っているのではないかと名人に問いますが、名人はその対局はアキラの読みの甘さが原因でsaiが勝った。私が相手なら私が勝っていたと言います。しかし、「真の力は自分で打ってみなければわからない」とも言います。

それを聞いたヒカルはもう一度塔矢名人に頼みます。すると真剣さを感じたのか、十段戦シーズン中の良い気晴らしになると言いなんと名人は対局を承諾します。十段戦の第四局の翌々日が対局日となりますが、名人は正体を明かさない点やネット碁に不慣れなこともあってか、真剣勝負というわけには行かないという口ぶりで、佐為は残念がります。

そんな佐為を見たヒカルは真剣に打ってくださいと頼み万が一負けた時の話を口にした矢先、「私は負けんよ」と名人が即答し、負けたらプロをやめるとまで言いだします。話が大きくなりすぎて焦るヒカルに対して、「君は本気で私が負けるかもしれないと思っているようだ」と言い、どんどん対局の詳細を決め始めます。

そんなやりとりを見ていた佐為は俄然やる気が出たのか、鬼気迫る表情で名人を見つめます。 

 

みどころ

アキラの父である塔矢名人が倒れて、アキラとヒカルの念願の対局が流れてしまったところから話は始まります。

病室でのシーンがメインとなるこの回ですが、実は大規模なフラグ回収とフラグ立てが行われる物語の根幹に迫る回でもあります。

特筆すべきは、やはりアキラとヒカルが対局した碁会所の関係者の話やインターネットカフェでのアキラとヒカルが遭遇したイベント、ネット碁の覇者saiの存在に加えて緒方に紹介されネット碁を始めた塔矢名人と、ここにきて様々な出来事が一同に介します。

物語の最初期の出来事も含めて、塔矢名人と佐為の対局を形作り、周囲の人を巻き込み名人の引退までかけてイベントに持っていくこの筋書きは、ちょっと他には見られないのではないでしょうか。

個人的には、塔矢名人がネット碁よりも普通の囲碁の方が良いと語るおじいちゃんっぷりがツボです。

佐為の対局に対する熱意と名人のプライドや意地という、ヒカルにしか認識できないお互いの闘志も非常に効果的に描かれております。

原作やアニメが出てきた当時よりも、ずっと進歩した情報社会である今日であればどんな形の対局になったのだろうかと色々と考えたくなってしまいますね。

最新情報をチェックしよう!