あらすじ
大人相手の対局で実力が出せないヒカルを見て、打つ手に焦りと無理が出てくる院生試験の時を思い出しながら佐為は心配そうに対局を見守ります。二回戦も調子を出せずヒカルは負けてしまい、後がなくなってしまいます。
翌三日目、ヒカルは誰にも会わないよう対局開始時間ギリギリを見計らって会場に向かいます。対戦相手は院生仲間のフクです。一方のヒカルの母は祖父にヒカルのプロ試験について相談します。母の話によると、ヒカルの父親は「どうせ落ちるのだから好きにさせたらいい」という方針らしく、二人は縁側で呑気に語り合います。
ヒカルは気心が知れたフクが相手ということもあり、普段の力を発揮することができ、午前中で勝つことができます。これで1勝2敗となり、フクはヒカルが2敗していたことに驚きます。ヒカルは念願の一勝を記念して、勝敗表だけでなく自分の手のひらにも白星のハンコをつけ、奮起します。
一方、予選免除組の和谷と伊角は街の碁会所で大人相手に対局をして腕試しをしています。別れ際、「強い打ち手と打ちたいならここに行くといい」といって和谷はメモを受け取ります。暇を持て余した和谷と伊角は、ヒカルが三連勝していると思い棋院に向かいますが、ヒカルたちは既に対局を終えて帰っていました。
翌日、予選は三敗と三勝の人たちがいなくなり再び抽選を行い対局相手が決まります。ヒカルは椿を警戒しますが、椿は三勝しているためいないとわかり安心します。三敗したら予選落ちのため、二敗の者同士が当たるとどちらかが落ちるという厳しい戦いになります。
ヒカルは調子を取り戻し対局は危なげもなく勝利します。最初からこの調子ならよかったのにと佐為は悔しがりますが、ヒカルは手に白星のハンコを押し、奮起します。
翌日、二勝二敗の五人が集まり抽選を行います。それぞれAとBが書かれた紙を引く中で、ヒカルは白紙を引き当てます。ヒカルは手空きといって不戦勝になり、あっさり予選通過が決まります。
「俺ってついてる!」と喜ぶヒカルですが、佐為にそれは逆でヒカルはついていない。一局でも場数を踏んだ方がよかったのだと一喝します。これから大人と打つための特訓をしなければとヒカルは言いますが、具体的な解決策は思い浮かびません。ヒカルはとりあえず、夕方に棋院である森下九段の研究会まで佐為とマグネット碁をして時間を潰します。
夕方になり、和谷が棋院に行くと不戦勝で予選通過を決めたヒカルと会い、予選について話を聞きます。面倒見の良い和谷は、ヒカルを大人との対局に慣れさせるため、伊角と三人で碁会所での腕試しに誘います。
対局は奈瀬もフクも勝利し、これから本番だと意気込みます。
みどころ
調子が出ないヒカルの様子がよく描かれていますが、やはり若手プロというのはすごいのだなとつくづく感心させられます。珍しく、ヒカルの母親と祖父が登場し、ヒカルの囲碁へののめり込みについて話し合いますが、ヒカルの実力や実情を全く理解しておらず、なかなか面白いですね。
和谷と伊角が碁会所で紹介先として受け取ったメモは今後、ヒカルと深く関わってくることになる大事なアイテムなのでチェックしておくと良いでしょう。
大いに苦戦したプロ試験の予選ですが、ヒカルの三勝目はなんと不戦勝というのがなんとも言えませんね。一度対局した者同士の扱いなど、細かい設定や描写もしっかりしていて、非常によくできた作品だなとつくづく感心させられます。
そして、和谷の兄貴っぷりが素敵ですね。こんな友達を持ってみたいものです。研究会に誘ってくれたのも和谷ですが、この和谷の提案がヒカルを非常に強い棋士に成長させる起爆剤となります。